すべてを断った将軍

すべてを断った将軍

主な神様: 関聖帝君
台北・行天宮の夜明け、まだ七時になる前から祭壇の前に人が並ぶ。スーツの上着を片手に持ち、革靴を鳴らしながら歩いてくる会社員。香を三本立て、目を閉じる。何を祈っているのかはわからない。でもここに来る人の多くは、商売のことを、契約のことを、誰かとの約束のことを、胸の中で整理してから帰っていく。 関羽という男の話は、約束をめぐる話だ。 三国時代、劉備・張飛と桃の花の下で盃を交わし、「生まれた日は違えど、死ぬ日は同じであれ」と誓った。その誓いが、その後の人生をすべて決めた。 戦に敗れ、関羽は曹操の捕虜になった。曹操は彼を欲しかった。豪邸を与え、汗血馬を贈り、美女を侍らせ、金銀を積んだ。三日ごとに大宴、一日ごとに小宴。どれだけ手を尽くしても、関羽は受け取らなかった。赤兎馬だけは受け取った——劉備の元へ戻るために足が要ると言って。 ある日、劉備の居場所がわかった。関羽は翌朝、曹操に手紙を一通置いて去った。追っ手が来た。五つの関所を、六人の将を倒して突き破った。馬の蹄の音が土を叩き、赤い馬体に朝露が光った。誓いに向かって、男は走った。 後に麦城で囲まれ、斬られた。首は曹操の元へ届けられた。だが関羽の「義」という一字は、千八百年間消えることがなかった。 今の台湾では、ビジネスマンが参拝する。警察官が参拝する。そして、暴力団も参拝する。同じ神を、全く異なる立場の人たちが拝む神は珍しい。理由はひとつだ——関聖帝君が象徴するのは、法律でも正義でもなく、「約束を守る」という、人と人の間にある最も古い倫理だから。どんな仕事をしていても、それだけは同じだと、台湾の人は知っている。
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