詳細紹介
夜明け前の鎮海公園の砂浜に、一隻の木造船が薪の山の中央に立っています。火が入ると、数万人が声を出さずに見守ります。船は数時間かけて燃え、日の出前には燃え尽きます。東港迎王平安祭典の最後の夜です。
王爺とは
船が送り出すのは「代天巡狩」の千歳爺、通称・王爺(ワンイエ)です。その由来には諸説ありますが、広く知られているのは、玉皇上帝の命を受けて交代で人間界を巡察し、任期が終われば天に戻る神々であるという説明です。巡察する対象は疫病、災厄、そこにあるべきでないものです。ですから王船を燃やすのは神を追い払う行為ではありません。巡察を終えた勅使をお見送りする儀式です。
三年に一度
東港・東隆宮の迎王平安祭典は、丑・辰・未・戌の年に行われます。つまり三年に一度、八日七夜にわたって続きます。海辺での「請王(王を迎える)」に始まり、「送王(王船を燃やす)」で幕を閉じます。
主な流れは次のとおりです。
● 請王:海辺で筊杯(ジャオベイ)を投じ、その回の大千歳がどの神かを確認します。
● 過火:神輿の担ぎ手が、赤く焼けた炭の上を駆け抜けます。
● 遶境:数日かけて東港の七つの地区をまわります。
● 王船遊江:王船が陸路で町を巡り、沿道の住民が拝みます。
● 送王:最終日の夜明け前、浜で王船を燃やします。
あの船について
王船は装置ではありません。竜骨、船倉、帆柱を備えた実船と同じ仕様の木造船で、米、塩、水、日用品、さらには紙で作られた水夫まで積み込まれます。建造には約一年かかり、専門の船大工が手がけ、費用は信者の寄進でまかなわれます。
よく造られ、より完全に燃えるほど、その回の送り出しが清らかであるとされます。
東港だけではありません
王船の儀礼は南部沿海一帯に広がる信仰で、一つの廟の行事ではありません。
● 屏東・東港東隆宮:規模が最も大きく、最もよく知られています。
● 台南・西港慶安宮:西港刈香。同じく国家重要民俗で、「台湾第一香」と呼ばれます。
● 高雄の茄萣、屏東の小琉球、台南の蘇厝には、それぞれ独自の周期とやり方があります。
なぜこれほど人が集まるのか
台湾沿海の古い集落にとって、疫病は抽象的な言葉ではありませんでした。この祭典は、集落が手放したいもののすべてに船体と帆柱と名前を与え、そのうえで燃やします。行為そのものに力があるのです。「災厄は送り出せる」という考えを、浜に立って目で見られるものに変えているからです。
訪れるなら、まず開催年を確認してください。祭典のない年の東港では、東隆宮の日常の姿しか見られません。その八日間だけは、町全体が祭典の時間で動きます。