祀られている神様
慚愧祖師
紹介
この廟が主祀する神様の名には「慚愧(ざんき)」——恥じ入る、という言葉が入っています。自らの心残りを名にした神様は、台湾でもほかに見あたりません。慚愧祖師、俗名を潘了拳(はん・りょうけん)といい、広東の陰那山(いんなさん)で道を得ました。入寂の前、すべての人を苦から救いきれなかったと自ら恥じ、弟子に塔へ「慚愧」の二字を刻ませたと伝えられます。鹿谷鳳凰山寺は嘉慶年間の創建で、南投山間部における慚愧祖師信仰の中心です。かつて山へ入って開墾した漢人にとって、この神様はもっとも実際的な存在でした。瘴気(しょうき)、猛獣、道迷い——山で恐ろしいものは、みなこの神様に願ったのです。廟は鳳凰村の路地にあり、標高のぶん空気は涼しく、茶畑を渡る風の音が聞こえるほど静かです。
歴史
鳳凰山寺が建てられた清の嘉慶年間は、ちょうど漢人が南投の山間部へ分け入っていった時代でした。開墾の一行は慚愧祖師の香火を携えて山に入ります。瘴気、猛獣、道迷い——入山でもっとも恐ろしい三つは、いずれもこの神様がつかさどると信じられていたからです。この地にたどり着いた先民は、土地が肥え、地形も故郷に似ていることに気づいて草を結んで庵をつくり、そのまま住みつきました。携えてきた香火をお祀りしたのが、この廟のいちばん古い姿です。二百年あまりを経て、鹿谷は開墾地から茶どころへと変わりましたが、鳳凰山寺はいまも山間の慚愧祖師信仰の中心です。旧暦正月六日の聖誕には各地の客家の人びとが里帰りして参拝し、山道は人で埋まります。