詳細紹介
「般若波羅蜜多心経」、ふつうは「般若心経」と呼ばれます。玄奘の訳本は全文でわずか二百六十文字。それでいて仏教で最も広く伝わった経典であり、全六百巻の「大般若経」をぎりぎりまで煮つめた精髄とされています。台湾では、それは仏教徒の日課であるだけでなく、とうに華人文化そのものの日常へ染み込んでいます。
核心の哲学
経全体が、たった一字に掛かっています——「空」(シューニヤター)。冒頭でこう説きます。「観自在菩薩が深い般若波羅蜜多を行じた時、五蘊は皆空なりと照見し、一切の苦厄を度した」。般若の深い智慧でひと照らしすると、観自在菩薩は、一切の存在を構成する五蘊(色・受・想・行・識)が根本において空であることを見通しました。続くのが、あの最も名高い一句です。「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」――物質の世界と空性は、対立する二つのものではなく、一つのものの両面なのです。これは虚無ではありません。すべては因縁が寄り集まって生じ、永遠に変わらない自性を持たない、という意味です。ここを見透せば執着を手放すことができ、「心に罣礙なく、罣礙なきが故に恐怖なく、顛倒夢想を遠離して究竟涅槃に至る」境地へと至ります。
結びの真言
般若心経は、締めくくりの一句「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶」(サンスクリット)で結ばれます。意味は「行けり行けり、彼岸に行けり、みなともに彼岸に行けり、悟りよ幸いなれ!」——般若の智慧の力を、ことごとくこの数語に収めきった、全経の総持の真言です。
写経文化
台湾では、心経を書き写すことはこの上なくありふれた修行です。それはただの習字ではありません——一字また一字とゆっくり書き進めるには集中が要り、静けさも要ります。一筆一画が、まるで経文との対話のようです。少なからぬ寺院(たとえば法鼓山)が「写経室」を設け、静けさのなかで書き写せるようにしています。なかには千遍、一万遍と書き満たすことを誓い、その功徳を心に掛かる人へ回向する方もいます。文創(クリエイティブ)市場でも、さまざまに凝った心経の写経帳が作られ、古くからの修行と現代の美意識とをつないでいます。
日常の活用
般若心経は、台湾ではほとんど至るところにあります。
- 仏寺の朝晩の勤行で必ず唱えられる経文
- 葬送の法事で故人のために誦む
- 書道家が繰り返し書く創作の題材
- 金細工店が金のお守りや腕輪に刻む
- お守りに全文が印刷されていることも多い
- 心が落ち着かない時、多くの人が数遍を黙誦して心を鎮める
唱え方
般若心経は短いので、毎日唱えるのにうってつけです。朝起きたばかりの時や、寝る前に静坐して、三遍から七遍ほど唱えるとよいでしょう。語速はゆるやかに、発音は明瞭に、呼吸に沿って唱えます。まず経の意味をあらかた掴んでから唱えるとよい、という人もいますが、たとえまだ参りきれなくても、誠を込めて唱え続ければ、心はやはり少しずつ定まっていきます。